試作品製作の費用処理はどうする?会計と税務で取り扱いが異なることもある 2022/08/03 column 製品開発のプロセスにおいて、多くの場合製作することになるのが試作品です。幾度も試作を重ねてようやく新製品が完成することもありますが、既存の製品をアップデートするだけですぐに完成するケースもあるでしょう。いずれにしても、試作品の製作には必ず費用が発生します。今回は、試作品製作にかかる費用の処理について、会計上と税務上の観点から見ていきましょう。 【目次】 1.試作品を作るためにかかる費用は「研究開発費」とみなされる 2.試作品が使い物にならなかったときは「一般管理費」として処理される 3.資産価値のある試作品が出来た場合は会計と税務で取り扱いが異なってくる 4.今回のまとめ 試作品を作るためにかかる費用は「研究開発費」とみなされる 試作品の製作には、原材料、人件費、競合する他社製品の購入費などの費用がかかります。これらの費用は、会計上では「研究開発費」に該当。これは、「研究開発費等に係る会計基準」によって定められているものです。 「研究開発費等に係る会計基準」に則って、会計処理をすることが義務づけられているのは以下のような企業です。これらの基準に当てはまらない場合は、必ずしもこの会計基準に則る必要はありません。 ・上場企業とその子会社や関連会社 ・会社法上の大会社とその子会社 ・会計監査人を設置している場合 「設計や実験のための試作」にかかった費用は、上記のように研究開発費として費用処理することになります。一方で、製品を「量産化するための試作」にかかった費用は原則、研究開発費ではなく、製造原価として処理ししなければなりません。 試作品が使い物にならなかったときは「一般管理費」として処理される 試作品を作ったけれど使い物にならず、産業廃棄物として捨てるしかない物が出来上がることもあるでしょう。会社にとって資産価値のない試作品が出来上がった場合、それにかかった費用は経費として処理します。会計でも税務でも、処理方法は同じです。税務上の注意点は、経費として処理した試作品を廃棄していないと「資産価値がある物」と捉えられる可能性があるため、適切な方法で確実に廃棄する必要があります。 なお、試作のつもりであったけれど上手く作れて販売できるなら、在庫として計上します。これも、会計・税務ともに処理方法は同じです。 資産価値のある試作品が出来た場合は会計と税務で取り扱いが異なってくる 試作品について、会計と税務で処理方法が異なるケースを見てみましょう。例えば、精密機器を製造している企業が、新たな機器の試作品を作ったとします。捨てるしかない物が出来上がったとすれば、上の項目で解説したように経費として処理。一方で、もしもその試作品を捨てずに会社で保管・展示しておいたり、デモ機やテスト機として今後利用したりするのであれば、会計と税務で異なる処理が必要です。 まず、会計上は研究開発費の扱いとなります。試作品を作るための費用は、たとえその試作品を捨てずに利用したとしても研究開発を目的としている物であれば、研究開発費として費用処理することが会計上の決まりです。 税務上では、試作品をその後保管・利用する場合、本来その試作品が固定資産扱いとなるものであれば、固定資産として取り扱います。なぜなら、税法は製作した経緯や使用目的に関係なく、資産そのものの属性で取り扱い方が決定されるからです。出来上がった試作品をその後捨てずに利用していくケースで、それが工具器具備品となる要件を満たしていれば、固定資産で計上し減価償却していきます。 今回のまとめ 試作品を作る際に発生した費用、すなわち「設計や実験のための試作」にかかった費用は、会計上「研究開発費」として処理します。製品を「量産化するための試作」にかかった費用は、製造原価の扱いです。 会社にとって資産価値のない試作品が出来上がった場合は、その試作品を作るのにかかった費用を経費として処理する、というのが会計上、税務上の決まりです。税務上の注意点は、経費として処理した試作品を正しく処理廃棄していないと「資産価値がある物」と捉えられる可能性がある点。また、資産価値のある試作品を販売する場合は、会計でも税務でも、在庫として計上します。 もしも、その試作品を捨てずに会社で保管・展示しておいたり、デモ機やテスト機として今後利用したりするのであれば、会計と税務で異なる処理をする必要があります。会計上では研究開発費の扱いとし、税務上では固定資産として取り扱うのが原則ですので、把握しておきましょう。