試作品製作の選択的レーザー焼結(SLS)の特徴と長所と短所 2022/07/08 column 試作品製作で選択的レーザー焼結(以下SLS)を検討している人の中には、SLSの特徴と長所・短所を把握したい人もいるのではないでしょうか。試作品製作で加工方法を選ぶ際、特徴や長所・短所を把握しておくことが重要です。SLSを検討するのであれば、まずは特徴と長所・短所を理解しておきましょう。ここでは、試作品製作でSLSの特徴、切削加工との違いについて解説します。 【目次】 1.試作品製作における選択的レーザー焼結(SLS)の最大の特徴 2.サポート材を必要としない3Dプリント工法 3.3Dプリントと切削加工の違い 4.今回のまとめ 試作品製作における選択的レーザー焼結(SLS)の最大の特徴 SLSとは、造形部分に粉末状の材料を敷き詰めてレーザービーム照射して焼結させる加工法です。粉末状の材料は金属や樹脂であり、レーザーにより融解して凝固することで表層を形成します。 形成した表層は1層ずつ積層して形状化することで、複雑で精密な部品を試作することが可能です。SLSに用いられる樹脂材料はナイロン系のみで、種類によっては耐熱性や耐靭性を持たせられます。 試作品製作でのSLSは設計データをそのまま出力するので、高精度で複雑な内部構造の部品も製作できます。SLSの造形品は強度に優れ、小ロット生産にも適しており、実際の製品として使用することが可能です。密度が高く耐久性にも優れている特徴を生かし、性能・実用試験にも利用できます。 サポート材を必要としない3Dプリント工法 SLSはサポート材を必要としない3Dプリント工法であり、中空形状の造形も得意です。SLSは粉末材料を敷き詰めて焼結し積層化することで形作るので、中空部分のサポートも必要ありません。製造工程で中空部分は焼結されないままになり、完成時に粉末を除去することでサポート材を利用せずに中空部分を再現します。 サポート材が必要な加工法は、サポート材を排除する際に部品を破損するリスクがありますが、SLSにはそのリスクがありません。複雑で繊細な部品を試作する際は、破損のリスクを軽減することが重要なので、SLSは試作品製作において安心できる加工法だと言えるでしょう。サポート材を排除する時間や手間を省けるので、納期短縮にも繋がります。 3Dプリントと切削加工の違い 3Dプリントと切削加工では加工方法の違いだけでなく、3つの要素で異なります。 ・品質 ・コスト ・試作期間 それぞれについて解説します。 品質 3Dプリントは中空構造などの複雑な内部構造も試作可能ですが、切削加工では製作できません。3Dプリントには使用できる材料に制限がありますが、切削加工は制限がなく最終製品と同様の材料を使用できます。 コスト 3Dプリントはパソコンで設計データを事前に準備すれば、材料費以外にコストが発生することはありません。切削加工は金型製作などの事前準備にコストが発生するだけでなく、外注加工によってコストが高額になることもあります。 試作期間 3Dプリントは、出力データが準備できればすぐにでも試作可能であり、1日もあれば試作品が完成します。切削加工は事前準備に多くの工数を経なければならず、完成までに期間を要するでしょう。 今回のまとめ SLSは造形部分に粉末状の材料を敷き詰めて、レーザービーム照射して焼結させる加工法です。用いられる材料はナイロン系の樹脂材料。SLSは設計データを直接出力できるため、複雑で高精度な試作品を製作できます。 SLSは中空部分の製作でサポート材が不要なので、サポート材を排除する際の時間やコストを省くことも可能です。SLSと切削加工の違いは、加工方法だけでなく「品質」「コスト」「試作期間」の3つの要素で異なります。それぞれの違いを理解した上で、適した加工方法を選ぶようにしてください。