モックアップ製作で意識しておきたい特許権と特許権侵害時に必要になる賠償金と知識 2022/04/20 column 新製品の開発や製品化に伴って、特許権を取得しておくことは企業にとって重要なポイントです。また、開発した製品が他社の特許権を侵害するようなものであった場合、多額の賠償請求をしなければならないというトラブルも発生してしまいかねません。 今回は、特許権を侵害してしまった場合の賠償額や知識について解説します。 【目次】 1.モックアップ製作のタイミングから特許法を意識しておきたい理由 2.自社が特許権を侵害されたときの対処法 3.もしも自社が特許権を侵害してしまった時に必要になる対応と賠償金とは 4.今回のまとめ モックアップ製作のタイミングから特許法を意識しておきたい理由 特許権とは、自社で開発した技術や製品を他人に利用させない(営利目的)ための権利のことです。この権利は、製品を開発したと同時に付与されるものではなく、別途、特許庁に特許の申請を行わなければなりません。 モックアップ製作の段階から特許法を意識しておきたい理由には以下のことがあります。 ・商品の類似化を避ける モックアップ製作時の段階で「商品化による収益」を考えた場合、他社が類似した商品やコピー品を販売してしまうと、独自技術を開発する意味がなくなってしまいます。特許を取得することで、他社製品の類似化、コピー品を回避することが可能です。 ・開発技術保護 モックアップ製作の段階で、「他社にないオリジナル技術」を開発する場合もあります。そうした技術が競合に奪われてしまわないよう、製作の段階から特許を出願する準備をしておくことがとても重要です。 自社が特許権を侵害された場合の対処法 他社によって、自社製品の特許権を侵害されてしまった場合、どのような対応が必要なのか順を追って見ていきましょう。 1. 他社製品を分析(特許侵害の可能性) 特許を侵害している可能性のある製品を入手し、自社製品との類似性について分析します。販売前の場合は製品を入手できないこともあるため、カタログ、パンフレット、Webサイトなどでチェックする場合も少なくありません。 2. クレームチャートを作り、特許侵害の事実確認 対象商品が、特許公報の構成概要に記載している技術に該当しているかクレームチャートを作って判断して警告書を送付します。クレームチャートとは、特許請求の範囲に記載された構成要件と対象製品の構成を対比するための表で、特許侵害の事実確認に利用されているものです。 3. 製品製造、販売の差し止め請求 検証の結果、特許を侵害しているとなった場合、「製品の差し止め(製造、販売停止)」「損害賠償請求」「信用回復措置」「刑事告訴」などで対応することとなります。 基本的には、製品の差し止めや賠償請求による解決が多く、刑事告訴することは非常に稀です。 もしも自社が特許権を侵害してしまった時に必要となる対応と賠償金とは ここでは、自社が特許権を侵害してしまい、警告書が届いた場合の対処法と賠償金について解説します。 1.特許権者と特許権の有効性を確認する 特許原簿を使って特許権の有用性について確認します。前述したクレームチャートを作成して特許権の侵害について確認することで、さらに詳細を割り出すことが可能です。 2.「先使用権」が利用できるか調べる 先使用権とは、特許権侵害の場合でも「特許権者に対価を支払わずに特許発明を実施できる」権利のことで、以下の条件を満たすことで適用される場合があります。 ・特許の存在を知らずに発明、販売を行った ・特許出願の時点で商品の販売に着手、準備していた 3.警告文に対する対応 上記を確認したのちに、警告文に対する回答書を作成します。自社製品が特許を侵害していた場合は、相手側の言い分を受け入れ、販売停止や損害賠償金の支払いに対応しなければなりません。 ただし、調査の結果、自社製品が特許を侵害していないということであれば、特許侵害に当たらないという理由を明記した回答書を送付し、双方で話し合いを行います。 今回のまとめ 特許権は商品開発において、今後の製品動向を大きく左右する重要なポイントです。自社、他社問わず、特許権侵害によって、賠償請求による会社の倒産や、イメージダウンによる売上の低下など、大きな問題に発展することも少なくありません。 万が一、特許権に関する問題が発生してしまった場合は、真摯に対応することが重要です。