試作品製作する際に知っておきたい「アルミニウム」の基本的な特徴

2022/04/08
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アルミニウムは、非鉄金属の中でもよく使われる素材の一つです。例えば、1円玉、自販機の缶ジュース、車やバイク、高級製品の一部など、少し探すだけでもアルミニウムが使われているものは数多く存在します。アルミニウムは通常の金属とは違った特性を持っているため、素材の性質や加工方法などについて理解しておくことが大切です。今回は、アルミニウムの特徴と種類、加工方法などについて解説します。

試作品製作の材料になるアルミニウムの主な種類と特徴

通常の鉄などに比べて、アルミニウムには以下のような特徴があります。

軽いのに強度が強い

比重が7.9の鉄に対して、アルミニウムは2.7程度の比重しかなく、同じ質量で3分の1の重量しかありません。しかし、強度は一般構造用鋼材の7割程度もあるため、重量あたりの強度が非常に高いという特徴があります。

錆びにくい材質

アルミニウムは、空気中で自然に「安定した酸化皮膜」を生成します。この皮膜が錆や腐食などを妨害するため、錆びにくい性質です。錆びにくいという点から、塗装やメッキ処理などをする必要がないというメリットもあります。

加工しやすく熱を通しやすい

アルミニウムは塑性加工がしやすく、薄肉や複雑な形状にも形成しやすいため、通常の金属製品よりも自由度の高い加工が可能です。また、熱伝導率が非常に高い(鉄の約3倍)ため、エンジンやヒートシンクなどの「冷却用素材」として多く使われています。

磁気を帯びず、電気を通す

アルミニウム自体の電気伝導率は約6割ですが、比重が3分の1であるため、他の鉄系素材に比べて電気をよく通す性質です。また、磁気を帯びない性質から、医療機器やリニアモーターカーなどにも利用されています。

アルミニウムを材料にした試作品の仕上がりと魅力

アルミニウムは他の鉄系素材と比較しても、切削や加工しやすいため、より複雑で造形美のある製品を作りやすいというメリットがあります。また、腐食しにくくなっているため、他の素材に比べて保管にあまり気を使う必要がないという点も大きなメリットだと言えるでしょう。
また、アルミニウムは軽い素材であるため、さまざまな製品の軽量化を行うことが可能です。重量を軽くしたい場合には、まず検討すべき素材だと言えます。

アルミニウムを材料にした試作品製作のメリット・デメリット

優れた性質を持っているアルミニウムですが、以下の点には注意しておく必要があります。

強度自体は低い

アルミニウムは比重に対しての強度は優れているものの、鉄鋼材料に比べると強度は劣ってしまいます。飛行機の翼などのように、しなる構造部分などには適していますが、強度が求められる部品(歯車等)にあまり向いていないと言えるでしょう。

腐食しにくいものの腐食は避けられない

他の鉄鋼素材に比べれば腐食耐性は強いものの、環境や条件によっては腐食が進行する可能性があります。こうした弱点を補うために、製造工程で「焼き付け塗装」「樹脂コーティング」といった表面処理を行っていることも少なくありません。

線膨張係数が大きい

アルミニウムは、鉄系素材の2倍近く線膨張係数が大きいという特徴を持っています。そのため、加熱、冷却といった温度変化が激しいところで使用されると、疲労によるクラックや破損といったトラブルが発生する可能性があるので注意が必要です。

疲労限度が存在しない

一般の鉄系素材には、疲労限度(金属疲労が起こらない範囲)が存在しているため、疲労限度以下の変動負荷が発生しない設計にすることで、半永久的に使用することが可能です。しかし、アルミニウムには疲労限度がないため、設計段階で「製品寿命による亀裂破損」が起きてしまった場合でも、強度上問題がないか確認する必要があります。

今回のまとめ

アルミニウムは、通常の鉄系素材と比較しても、数多くのメリットを備えた素晴らしい素材です。しかし、アルミニウムにしか存在しないデメリットなどもあるため、これらの弱点を理解した上で、アルミニウムを利用する必要があります。アルミニウム素材の特徴をよく理解して、うまく活用してみてください。