試作品開発の際に利用できる「ものづくり補助金」の活用事例 2022/02/21 column 中小企業などに対して、設備投資などのための補助金を支援する制度を、「ものづくり補助金」と言います。平成24年に補助金制度が始まり、現在まで何度か名称を変えて補正予算が充てられています。この制度を利用し、これまでにたくさんの企業などが売上を伸ばしてきました。その中から、今回の記事で実際の活用事例をいくつか紹介しますので、試作品開発のための申請および活用の参考にしていただければ幸いです。 【目次】 1.業務のデジタル化により生産性が向上した 2.IoT技術を使った生産管理システムを導入した 3.植物由来の新素材を量産させるための試作機を開発した 4.今回のまとめ 業務のデジタル化により生産性が向上した とある製造業者は、従業員数が15名と小規模ながら、鋼材の購入をはじめ切断・鍛造・熱処理・検査・配送と、全てを社内で行う一貫生産体制がセールスポイントでした。しかし、個別受注生産を受ける際には、見積もり作成をベテランの勘と経験に頼って行なっていたのです。見積もりや受発注記録は紙で保管されていた上、製品の在庫確認は担当者が目視で行なっており、極めて低い生産性が問題点でした。 この状況を改善するために、補助金により受注・工程・在庫の各管理システムを導入したことで、受注状況の見える化および正確な納期回答を実現しました。さらに、見積もり作成の納期や在庫管理にもシステムを活用し、生産性や品質の向上につながったのです。 IoT技術を使った生産管理システムを導入した 半導体装置に向けた金属加工を主に受給していた製造業者は、リーマンショック以降需要が急激に減少し、経営に大きな影響を与えていました。その時、画像診断装置メーカーから、精度の高い部品の製造依頼が舞い込んだのです。しかし、多段階における加工が、生産工程のボトルネックになりかねないと懸念されました。 この問題を解決するため、補助金を活用して生産管理システムの導入に踏み切り、IoT技術を活用して負荷状況などの監視ができるようになりました。機械の稼働状況や生産負荷、加工状況などの監視が容易となり、多くの製品の生産進捗状況が把握可能となったのです。 植物由来の新素材を量産させるための試作機を開発した とあるベンチャー企業では、植物由来の新素材であるCNF(セルロースナノファイバー) を乾燥・濃縮させる技術の開発に成功しました。濃縮したCNFを量産する装置の開発を目的として、補助金の申請を行ったのです。事業計画書は、専門知識や専門用語を使わず、誰にでも分かりやすい用語を使うことが重要であり、計画書を作成する技術者の方達は、この点に一番苦労したとのことです。また、商工会が行なっている専門家派遣制度により、第三者の目線から計画書を確認してもらったのも功を奏し、無事採択されました。 その後、量産用装置の試作機が完成し、海外メーカーとの商談成立につながったのです。経済産業省でも、CMF関連産業の市場規模を、2030年までに1兆円に拡大するとの目標を掲げ、取り組んでいます。 今回のまとめ ものづくり補助金は、設備投資などを支援する目的の補助金であるため、試作機の開発も対象に含まれます。補助金対象者や支給要件、補助金額などは、細かく規定されていますので、詳しくは取引先の金融機関・商工会・商工会議所などに問い合わせていただくと良いでしょう。