ものづくり・試作品製作時に考慮すべき知的財産権の概要 2022/02/17 column 補助金や助成金が支給される「知的財産権取得事業」の増加にともない、ものづくりにおいても「知的財産権」が注目されています。ものづくりや試作品製作においての知的財産権は、他社の知的財産権の侵害を避けることと、自社のアイデアが他社に侵害されないための施策の双方に対応が必要です。この記事では、ものづくりや試作品製作時に考慮すべき知的財産権について解説します。 【目次】 1.知的財産権とは? 2.ものづくりや試作品製作時には知的財産を確認しよう 3.知的財産権を取得するメリット 4.今回のまとめ 知的財産権とは? 知的財産とは、お金や家といった形のある財産とは違い、形を持たない無体財産です。知的財産権とは費用と時間をかけて作り上げたアイデアが、他人から模倣されることを防ぐことを目的としています。知的財産権が生まれた背景には、知的財産権を一定期間守ることで、新たな研究開発が活発になり、産業の発展につなげようという意図があります。知的財産権は全部で5つあり、まず著作権と産業財産権に分かれます。 産業財産権に含まれるのは、特許権、実用新案権、意匠権、商標権の4つがあります。これらのうち、ものづくりや試作品製作に関係するのは、特許権と意匠権です。 特許権は、アイデアを独占的に製造販売ができる権利、意匠権は、外観やデザインを独占して製造販売できる権利です。いずれも保護期間は最大20年あります。特許権は、形のない発明というアイデアを保護し、意匠権はデザインを保護するものと考えると分かりやすいでしょう。 ものづくりや試作品製作時には知的財産を確認しよう ものづくりや試作品製作をする際に、自社が考え出したアイデアやデザインを守ることは大切ですが、他社の知的財産権を侵害しないことも重要です。故意でなくとも、知らぬ間に商品化しようとしているアイデアやデザインが他社の知的財産権侵害を起こす可能性もゼロではありません。そこで、考え出したアイデアなどは試作品製作など形にする前に、調査する必要があります。 調査する際は、特許情報プラットフォームというデータベースを使用するといいでしょう。意匠権はすでに権利を得ているものだけが公開されますが、特許権は出願後審査待ちのものも公開されます。もし、事前調査を行うことなく商品化してしまい他社の知的財産権を侵害した場合は、販売停止だけでなく損害賠償を求められるケースもあります。特許情報プラットフォームは無料で利用できるデータベースです。必ず事前に調査をしましょう。 知的財産権を取得するメリット 自社が考え出したアイデアやデザインが他社の知的財産権に抵触しないことを確認できたら、自社の権利を守るために、知的財産権の取得準備を行うことをおすすめします。知的財産権を取得することで、次に挙げるような多くのメリットを得ることができます。まず、競合他社をけん制し、模倣防止に役立ちます。 また、他社が同様の事業活動に参入を防ぐことで、シェアの拡大にもつながります。さらに、知的財産権を取得していることは技術力を持っていることを公的に示すことができ、社会的信用が向上しやすくなるでしょう。知的財産権を取得していると、広告などに特許出願中、特許取得済みといった表記が可能です。その結果、自社の商品が消費者から選ばれやすくなるとともに、製品価値の維持にもつながります。これ以外にも、知的財産権を取得することで補助金を得られたり、他社に利用を許可することでライセンス収入が入ったりという新たな資金調達方法も生まれます。 今回のまとめ 知的財産権を取得することは、画期的な発明でないと意味がないと思うかもしれません。実際は、取得するハードルはそこまで高くないため、新たなアイデアやデザインを生かした商品であれば、取得しておくにこしたことはありません。知的財産権の取得は一種のブランド価値を持たせるのにも有効です。同時に、他社の知的財産権を侵害する可能性がないかの確認も忘れずに行いましょう。