試作品製作の外部委託時に契約書に記載すべき内容

2022/02/16
column

ものづくりにおいて、自社で試作品製作を行わずに外部委託することも増えてきました。その一方で、出来上がったものが想定イメージと違っていたり、材料調達に時間を要して納期が遅れてしまったりと、思わぬ問題やリスクに直面するケースもでてきます。このようなトラブルを未然に防ぐために必要なのが契約書です。この記事では、試作委託標準契約書に記載すべき事項について解説します。

【目次】
1.アイデアを守る知的財産権と秘密保持
2.個別契約や原材料及び部品の提供について
3.万が一を想定した瑕疵担保責任や中途解約について
4.今回のまとめ

アイデアを守る知的財産権と秘密保持

契約書に記載すべき事項はいくつかありますが、外部委託するにあたって気を付けておきたいのがアイデアの流出です。せっかくのアイデアが、開発前に知られてしまうのは避けたいものです。そこで、知的財産権の帰属に関する事項と秘密保持についての記載は必須です。試作品製作にあたって提出する図面にも知的財産権が発生する可能性が高いため、権利の帰属について定めておく必要があります。権利を帰属させる対象範囲と時期、著作者人格権不行使特約などについて、話し合った上で明文化しておくことをおすすめします。
また、秘密保持の条項では図面などの機密情報を扱う上での一般的規定を定め、管理方法についても記載するようにしましょう。秘密保持期間は一般的に契約締結から1年ですが、時間を要する場合などは3年など期間変更も必要です。

個別契約や原材料及び部品の提供について

一般的に試作品を外部委託する契約書には、納入期限や納入場所、代金支払期日といった細かな条件までは記載されません。上記のような内容は見積書に応じて、別途発注書を作成して取り決められるものです。そこで、契約書には個別契約の条項を盛り込む必要があります。口頭での連絡などでは、後に言った言わないのトラブルに発展することも少なくありません。トラブルを避けるためには、発注書などで文書化し、個別契約があることを記載しておくことが大切です。
また、試作品を製作する上で必要となる原材料及び部品の提供についても記載しておきましょう。そうすることで、出来上がった試作品に不具合が生じた際に、どの部位が原因であるのかを究明し解決させやすくなります。

万が一を想定した瑕疵担保責任や中途解約について

無いに越したことはありませんが、万が一に備えて瑕疵担保責任や中途解約についての記載も忘れずにしましょう。もし、瑕疵が見つかった場合は、検収期間中に確認を行った上で、検収完了までに通知するという期日の明記が必要です。基本的に、委託された試作品製作は発注者の仕様書に従って作られます。そのため、仕様書に準じて作られている限り、受注者はその責任を果たしていることとなり、開発や設計上の瑕疵を負うことはなくなります。
また、どのような時に契約解除の対象になるのかといったことも記載しておくことが必要です。契約違反がみられた際など、トラブルが発生した際の対策として、損害賠償に関する規定も記載しておくことをおすすめします。

今回のまとめ

日々新たな商品が生み出されていくなかで、ものづくりのスタートアップ企業なども増えてきています。その一方で、知識が不十分なまま試作品の外部委託を行ってしまい、費用面や納期面、仕上がりなどに満足がいかず、トラブルになるケースも少なくありません。事前に十分な協議を行うことはもちろんですが、何よりアイデアを守るためにも契約書を交わすことが大切です。ご紹介した契約書に記載しておきたい事項をしっかりと取り決めした上で、業務をスタートさせることをおすすめします。