ラピッド・プロトタイピングとラピッド・マニュファクチャリングの違い 2021/12/28 column 金型を使用することなく試作品や製品が作れることは、ものづくりにおいて大きな変革をもたらしました。それらを可能にしたのが、ラピッド・プロトタイピングやラピッド・マニュファクチャリング。一度はこれらの言葉を耳にしたことがある方でも、双方の違いまでは理解していない方も多いのではないでしょうか。この記事では、ラピッド・プロトタイピングとラピッド・マニュファクチャリングの違いについて解説します。 【目次】 1.製作する目的物が違う? 2.製作する工程が違う 3.工法はどちらも積層造形? 4.今回のまとめ 製作する目的物が違う? まず、ラピッド・プロトタイピングとラピッド・マニュファクチャリングの大きな違いは、製作する目的物が異なることです。ラピッド・プロトタイピングでは、試作品やモックアップなどを作るのに利用される手法です。 一方のラピッド・マニュファクチャリングでは、製品を作ることを目的とした手法です。ラピッド・プロトタイピングは社内決済を取るためのプレゼン資料やお客様から依頼された製品の試作品として用いられ、仕様書などの静的なものとは異なり、よりデザインなど見た目や意図を伝えるのに役立っています。ラピッド・マニュファクチャリングは、デザインや見た目といった部分に加えて、仕様や機能性といった細部までを反映しているのが特徴的です。 製作する工程が違う ラピッド・プロトタイピングとラピッド・マニュファクチャリングの違いは、製作する目的物以外にもあります。それは、製作する工程の違いです。ラピッド・プロトタイピングでは、まずデジタルイメージとなる3Dデータを準備するところからはじまります。その後、3Dデータを輪切り分割しスライスデータを作り上げます。そして、スライスデータを造形装置に入力し、データを元にした物理的なモデルを積み上げていくのです。 ラピッド・マニュファクチャリングにおいても、途中までは製作工程は変わりません。3Dデータを用意する工程までは同じですが、ラピッド・マニュファクチャリングの場合はデータから直接最終製品を製造することができます。大量生産には、まだ不向きではありますが、金属3Dプリンターなどの3Dプリンターを用いて、少量の製品をスピーディーに作ることが可能です。 工法はどちらも積層造形 ラピッド・プロトタイピングとラピッド・マニュファクチャリングの工程の違いのところでも触れましたが、作られ方はそこまで大きく変わりません。実際に、製作にあたって使用される工法はどちらも同じなのです。3Dデータをスライスして作ったデータを、一層ずつ使用する材料の層を重ねることで仕上げる「積層造形」が用いられています。積層造形にもさまざまな手法があります。ラピッド・プロトタイピングでは、光硬化樹脂と紫外線レーザーなどを用いる光造形法が用いられ、ラピッド・マニュファクチャリングでは、粉末金属や樹脂を焼結させる粉末焼結積層造形法が主流になります。 ラピッド・マニュファクチャリングは言ってみれば、ラピッド・プロトタイピングがより進化したものと言っても過言ではありません。ラピッド・プロトタイピングの研究がスタートした1970年代後半から比較すると、精度もスピード感も大きく変わってきています。そして、1990年代後半に入ると需要も高まりも顕著になってきたのです。 今回のまとめ ラピッド・プロトタイピングでは、新製品を投入するためのサイクル化の短期化が可能になりました。そして、ラピッド・マニュファクチャリングでは、多品種を少量生産することが実現されることとなりました。また、いずれも金型を使用しないことからコスト削減にもつながっています。これらのメリットを享受するために、試作品製作にはラピッド・プロトタイピングを、そして製品製作にはラピッド・マニュファクチャリングの導入を検討してみてはいかがでしょうか。