異業種と共同開発した商品の特許の出願方法 2021/12/10 column 異業種の企業とタッグを組み、商品を共同開発するケースは、かねてから行われている手法です。単独で出願するのとは異なり、商品を共同で特許出願するには、どのような方法で行うと良いのでしょうか。また、共同で特許出願する際の注意点は、何があるのでしょうか。今回の記事で解説しますので、特許出願の参考にしてみてください。 【目次】 1.共同出願契約の内容に注意しよう 2.商品の特許出願を主体的に進める当事者を決めよう 3.開発した商品の共同出願は慎重に検討しよう 4.今回のまとめ 共同出願契約の内容に注意しよう 共同出願契約とは、複数の業種や企業間で商品の研究や開発が行われ、商品を特許出願するための手続きおよび権利の取り決めのことを指します。 共同出願契約を締結するのは、特許を出願する前となるのが原則です。この契約で定めるポイントは、次のような点が挙げられます。 出願の対象、権利の持分、特許出願手続き、特許費用、持分の譲渡および放棄の禁止、権利の維持・保全、特許発明の実施、第三者に対する実施の許諾、改良発明など これらを記載する契約書には、当事者ごとの整理番号(もしくはそれに代わる番号)を記載するのが望ましいとされています。 さらに、発明の概要および発明者も記載しておくと安心です。共同出願契約でトラブルとなる可能性があるのは、権利の持分の比率です。 契約書に共有持分比率を記載するようにしましょう。 商品の特許出願を主体的に進める当事者を決めよう 特許を出願する際には、共同出願人のうち一部の人で行える行為と、出願人全員が一緒でなければ行えない行為があります。特許出願に対する審査請求や、 拒絶理由通知書に対する意見書などの提出は一部の人で行えます。これに対し、 出願の放棄や取り下げなどは、全員一緒でなければ手続きできません。 また、特許を受ける権利を共有している場合、他の共有者と共同でなければ、特許出願はできないのです。特許出願の手続きが円滑に進められるよう、出願を主体的に進める当事者「相互代表」を決めるのが一般的です。 開発した商品の共同出願は慎重に検討しよう 共同出願には、メリットとデメリットがあるとされています。メリットには、出願費用が軽減できる点や、期限管理を共有できる点などがあげられます。これに対し、契約内容によっては収益が不公平になる、権利持分の譲渡は共有者全員の同意がなければ行えないなどの点がデメリットです。つまり、権利を譲渡するのに制限がかかるため、 特許を受けた製品の製造や販売を外部委託する場合、共有者に許可を取らなくてはいけません。 この際のトラブルを回避するには、先ほど紹介した「共同出願契約書」を交わすことが望ましいとされています。ただ、契約書を交わす段階で想定できないトラブルも考えられるため、より慎重に対応しないといけません。 また、出願後数年経過して、事業の方針や方向性が異なってきた場合に、企業間の取引そのものが消滅してしまうこともあります。この場合、特許権に関する手続きが、全く進められなくなる恐れもあるのです。お互いが不利益にならない契約が難しいと判断されるようならば、単独名義での特許出願が賢明です。 今回のまとめ 特許の共同出願を行う場合は、共同出願契約書を作成し責任のありかを明確にしておくと、後のトラブルを回避できる可能性が高まります。共同出願に関して迷う点があれば、専門家である弁理士に相談するようにしましょう。