ものづくりで異業種と共同開発により製品化された事例 2021/12/09 column ものづくりを行う業種というと、製造業を想像する方がほとんどではないでしょうか。近年では、製造業と異業種とが連携し、新しい製品を開発する動きが顕著に見られるようになってきました。これまでとは異なる視点で開発を進めた結果、どのような製品が生まれたのでしょうか。実際に製品化された事例を見てみましょう。 【目次】 1.異業種と共同開発を行うメリットとは? 2.共同開発で生まれた製品や取り組みの事例を紹介 3.共同開発における注意点とは 4.今回のまとめ 異業種と共同開発を行うメリットとは? 異業種と提携して共同開発を行うことで、互いに持っている技術や人材を提供し合い、新しい価値(製品)を生み出せるようになります。開発の速度も早められるため、素早い対応が可能です。現代では、製品のライフサイクルが短くなっており、一社で市場を生き抜くことが困難となっています。少しでも早く製品を世に送り出すためにも、共同開発が大きな武器となるのです。 また、開発にかかるコストを、複数の企業で負担でき、資金面での懸念も減らすことができます。さらに、共同開発によってできあがった製品や技術を手がけた開発者は、知的財産権の権利者にもなれるため、場合によっては特許権などの権利を得られる可能性もあります。新型コロナウイルス感染拡大の影響により、共同開発に関心を寄せる企業も増えているのです。 共同開発で生まれた製品や取り組みの事例を紹介 実際に、共同開発によって、どのような商品が生まれたり、取り組みが行われたりしたのでしょうか。事例をいくつか紹介します。 トヨタ自動車とIT企業とのコラボレーション 2014年に、トヨタ自動車がIT企業との連携に力を入れていました。これには、ITの技術者を確保する目的があり、マイクロソフトやセールスフォース・ドットコムなどのIT企業との連携を行ったのです。運転操作に関係するソフトウエア(運転中にスマートフォンの使用が可能となるソフトなど)の一部の開発を、IT企業に一任することで、自動車メーカーとIT企業の垣根を超えた価値の創造を行いました。 さらに、車内に搭載するナビゲーションへインストールできるアプリの開発を、一般のコンテンツ事業者が行えるというオープンな取り組みが行われたことでも、大きな話題を呼びました。 木材加工業と鉄工所・建具店とのコラボレーション 秋田県の木材加工業の例を紹介します。 木材加工を行っている秋田県の企業は、ひとつの卸業者への販売を主としており、販路の拡大を課題としていました。そこで、国の小規模事業者持続化補助金を活用し、旋盤機械の導入や木材食器類の開発、ワークショップの開催などに取り組みました。 地元産の木材を使用し、地元の鉄工所や建具店とコラボ商品を開発したり、消費者に対して木工体験教室を開いたりした結果、個人や企業の取引先も徐々に増えていきました。機械の導入によりこれまでできなかった微妙なカーブ加工も可能となり、鉄工所とのコラボでは酒器や椅子を製作し、建具職人とのコラボでは組子お盆などを製作し、新商品が人気を集めました。 共同開発における注意点とは 共同開発はメリットも多い反面、注意点も把握しておかなくてはいけません。最も懸念されるのは機密情報などの漏洩であり、リスクを減らすには契約時に「共同開発契約書」と併せて「秘密保持契約書」を交わしておくと安心です。また、自社の技術やスキルが外部に漏れるのは避けられないため、慎重な判断が求められることもあります。 今回のまとめ 共同開発は、メリット・デメリットの両方がありますが、新たな価値を見出すための有効な手段であることは事実です。共同開発の案が出たときは、社内で充分検討したうえで、場合によっては弁理士への相談も有効です。