異業種と共同開発する際に気をつけるべきポイント

2021/12/03
column

さまざまな分野で異業種の連携による製品開発や店舗の共同展開、PRキャンペーンが注目されています。こうした連携は、異業種コラボと呼ばれ、それまでにはなかった新たな価値を生み出し、大ヒットにつながることもあります。ものづくりの現場でも、異なる業種の技術や発想の組み合わせによって、画期的な商品が生みだされています。しかし、異業種コラボもメリットばかりではなく、対応を誤ると深刻な企業間トラブルに発展することもあります。そのようなトラブルを未然に防ぐために、気をつけなくてはならないポイントについて説明しましょう。

【目次】 
1.共同開発のデメリットに注意
2.異業種ならではの難しさも
3.契約書の内容は十分に検討を
4.今回のまとめ

共同開発のデメリットに注意

異業種コラボには、新たなイノベーションを生み出す可能性があり、実際に優れた製品も開発されています。そうした魅力がある一方、注意しなければならないデメリットもあります。どのようなデメリットがあるのか、確認しておきましょう。

開発の利益や権利を一社で独占できない

異業種コラボは、共同開発という形を取るので、利益や権利は参加企業で分け合うことになります。このとき、各企業の貢献度が同程度であれば、半分ずつ権利を分け合うことで双方が納得できますが、利益や権利の配分が、貢献度に見合わないというケースがでてきます。
また、貢献度に関する認識が、互いに異なることもあります。当然、連携前に契約を結ぶことになるのですが、貢献度と利益や権利の配分については、十分に検討し、後からトラブルにならないよう細心の注意を払う必要があります。

情報漏えいのリスクがある

異業種コラボでは互いに協力しあって、製品を開発することになりますが、密接に連携しようとすればするほど互いの機密情報に近づくことになります。もし、機密情報が相手側に漏れてしまうと、将来的に大きな損害を被る恐れがあり、うかつに情報を全て公開するわけにはいきません。
一般的には、情報漏洩のリスクに備えるため、契約段階で「秘密保持契約」を結び、情報の取り扱いに関するルールを細かく定めます。

技術やノウハウを転用される可能性がある

異業種コラボの醍醐味は、異なる分野の技術や発想を持ち寄り、新たな価値観を生み出すことです。しかし、互いに技術や研究成果、開発体制などの一端を公開することになるため、優れた技術やノウハウを相手企業が別の用途に転用する恐れがあります。
技術やノウハウが流出してしまうと、パートナーだった企業が将来、競合他社と組み、自分たちとライバル関係になるかもしれません。このため、技術やノウハウについても、どの範囲まで共有するのか、慎重に検討しておくことが大切です。

異業種ならではの難しさも

異業種連携を行おうと思っても、実は、そう簡単にパートナーが見つかるわけではありません。共同開発を進めるには、共通の目的や課題を持ち、互いに足りない部分を補い合う関係でなくてはなりません。しかも、自分たちの技術やノウハウの一部を公開するわけですから、そうしたリスクを上回るメリットも必要です。もし、パートナーが見つかったとしても、異業種との連携の難しさもあります。
同業者の間であれば、商慣習や取引ルールへの共通理解があり、スムーズなコミュニケーションが取れますが、異業種同士では認識や理解に齟齬が生じることもあります。認識を共有するまで時間がかかり、開発に手間取ることも覚悟しておきましょう。

契約書の内容は十分に検討を

異業種コラボによる共同開発では、後のトラブルを避けるために、契約書の内容を詳細に検討しておく必要があります。まず、大切なのは業務負担の割合です。互いにどれくらいの業務を負担するかによって、費用負担や利益の配分も変わってきます。業務負担と成果の配分が公平なものとなるよう、業務の負担内容については細かく設定しておくことが大切です。
次に大切なのは開発期間です。成果が出ていないのにいつまでも開発を続けるわけにはいきません。もし、開発の期限を定めていないと、自分たちは既に共同開発が終わったと思っていても、相手が費用負担や成果の配分を求めてくることがあります。
さらに、知的財産権や機密保持など権利や義務に関する取り決めを契約上、明確にしておかなくてはなりません。特に大切な取り決めとして、「秘密保持義務」「目的外使用禁止義務」「競業禁止」があります。こうした取り決めをきちんと結んでいないと、自分たちの機密情報や技術、ノウハウが外部に漏れたり、別の用途に使われたりする恐れがあります。同業他社と競合する製品開発を行わないよう「競業禁止」の規定を盛り込むことも必要です。

今回のまとめ

非常に魅力的な異業種コラボですが、紳士協定だけで物事を進めるのは危険です。もちろん、互いを信頼し、紳士的に対応するのは当然なのですが、予期せぬトラブルへの備えは大切です。契約をしっかりと結んで置くことで、安心して共同開発を進められるという側面もあります。共同開発を行う際は、法律や実務に詳しい専門家にも相談しながら進めていきましょう。