試作品・モックアップ製作における「粉末造形」とは

2021/08/16
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試作品・モックアップ製作においては、製作する物の形状や予算、納期などに応じて様々な造形・成形・加工方法の中から最適な方法を検討します。数ある工法の中でも、「粉末造形」は3Dプリンタを活用した技術であり、近年になって技術が急速に向上しました。今後の技術力向上も含め注目度の高く、試作品製作において多く用いられている工法です。
そこで今回は、試作品・モックアップ製作における「粉末造形」についてお伝えします。

【目次】
1.試作品・モックアップ製作における粉末造形で用いられる機械と技術
2.試作品・モックアップ製作における粉末造形の種類
a. 選択的レーザー焼結
b. 選択的レーザー溶融
c. 直接的金属レーザー焼結
d. 電子ビーム溶解
3.今回のまとめ

試作品・モックアップ製作における粉末造形で用いられる機械と技術

試作品・モックアップ製作において活用される粉末造形は、3Dプリンター技術の一つの工法です。3Dプリンター技術には、光造形や材料押出法、シート積層法など様々な技術がありますが、粉末造形が他の造形方法と異なる大きな特徴は、その名のとおり粉末状の材料を使用する点です。粉末状の材料を造形ステージに敷き詰め、レーザービームなどを照射して熱することにより、一層ずつ硬化させて造形物を作ります。
粉末造形のメリットは、3Dデータから複雑な形状や構造の造形物も迅速に再現できる点や、ナイロン樹脂や砂、金属、セラミックなど様々な材料を使用できる点が挙げられ、試作品製作においては非常に重宝される工法です。しかし、造形物の周りに敷き詰めた粉末材料が表面につくためザラザラした質感で、一層一層の段差が生じるため、切削加工ほどの高精度で物を製作することには適していません。

試作品・モックアップ製作における粉末造形の種類

粉末造形には、粉末状の材料をレーザービームなどで加熱して固める方法「パウダーヘッド方式」と、粉末状の材料にバインダ(接着剤)吹き付けて固める「バインダージェット方式」に分けられます。パウダーヘッド方式は、粉末状の材料を加熱して密度の高い焼結物を作るため、造形物の強度や耐久性が高い一方、バインダージェット方式は材料を接着剤で固めるだけの方式のため、パウダーヘッド方式よりも迅速に制作できますが脆い造形物が出来上がります。
さらに、パウダーヘッド方式には、選択的レーザー焼結、選択的レーザー溶融、直接金属レーザー焼結、電子ビーム溶解に種類が分けられます。

選択的レーザー焼結

選択的レーザー焼結は、粉末状の材料にレーザーを照射して焼結(個体粉末を融点以下の温度で加熱すると緻密な物体に変化する現象)させる、最も一般的な造形方法です。入力した3Dデータに従ってレーザービームを照射する位置を選択し、一層ずつ造形するプロセスを繰り返して造形します。

選択的レーザー溶融

選択的レーザー溶融は、粉末状の金属にレーザーを照射して溶かして固めることにより造形する方法です。入力した3Dデータに従ってレーザービームを照射する位置を選択し、一層ずつ造形するプロセスを繰り返して造形します。単一の金属粉末に特化していることが大きな特徴です。

直接金属レーザー焼結

直接金属レーザー焼結は、粉末状の金属にレーザーを照射して焼結させる造形方法です。選択的レーザー溶融では、単一の金属粉末のみの造形であるのに対し、異なる溶融温度の合金などを造形することが可能です。

電子ビーム溶解

電子ビーム溶解は、粉末状の導電性金属に電子ビームを照射して焼結させる造形方法です。電子ビームの機能を保つため、造形ステージを真空状態に保つ必要がありますが、他の方法と比べて迅速に造形できるメリットがあります。

今回のまとめ

粉末造形は、粉末状の樹脂材料を造形ステージに敷き詰め、レーザービームなどを照射して熱することにより、一層ずつ硬化させて造形物を作ります。3Dデータから複雑な形状や構造の造形物も迅速に再現できる様々な材料を使用できる一方、表面がザラザラした質感で、一層一層の段差が生じるため、切削加工ほどの高精度で物を製作することには適していません。
粉末造形には、粉末状の材料をレーザービームなどで加熱して固める方法「パウダーヘッド方式」と、粉末状の材料にバインダ(接着剤)吹き付けて固める「バインダージェット方式」に分けられ、パウダーヘッド方式はさらに選択的レーザー焼結、選択的レーザー溶融、直接金属レーザー焼結、電子ビーム溶解に種類が分けられます。