企業が試作品製作を行う上で把握しておくべき代表的な溶接の種類 2022/10/11 column 溶接とは、文字通り金属を溶かして接合することです。代表的な金属加工のひとつで、金属を加熱もしくは加圧で溶かして接合する仕組みです。身の回りの多くの製品に加工されており、自動車、鉄道車両、航空機などさまざまな分野で溶接の技術が応用されています。 今回は、試作品製作における溶接の基本的な知識、代表的な溶接方法であるアーク溶接、レーザー溶接などについてわかりやすく解説します。 【目次】 1.試作品製作における溶接の代表的な種類とは? 2.火花が散る放電現象を利用したアーク溶接 3.精密さが必要とされる場面に適したレーザー溶接 4.今回のまとめ 試作品製作における溶接の代表的な種類とは? 数多い溶接加工の中から大きく分類すると、3種類あり、材料の接合によって「融接」「圧接」「ろう接」に分けられ、さらに細かく分類された溶接方法があります。 融接(溶融溶接)はアーク溶接(消耗電極式、非消耗電極式)、ガス溶接、レーザー溶接などがあり、圧接(加圧溶接・固相接合)は抵抗溶接、摩擦圧接などが挙げられます。ろう接はろう付け、はんだ付けなどです。 このような溶接の工程は手法ごとに適した材質と不適な材質が異なり、溶接に関する専門的な知識、長年の経験、熟練の技術・技能が溶接加工の品質を大きく左右します。そのため、試作品製作の段階で品質をどのように確保するかが重要です。 火花が散る放電現象を利用したアーク溶接 アーク溶接は、放電現象で発生した熱により金属を溶かす方法です。溶接の中でも最もポピュラーであらゆる金属の接合に広く使用されているアーク溶接は、使用される溶接機(トーチ)の電極棒(溶接棒)の溶解の有無によって大きく分けられます。 消極電極式は溶ける電極棒を電極として使用しており、この電極棒は、材料と接合する溶加材としての役割を兼ねています。 一方、非消極電極式は溶けない電極棒を使用して溶接を行う方法です。非消極電極式にはTIG溶接とプラズマ溶接があり、溶けない電極棒を使用して溶接を行います。 精密さが必要とされる場面に適したレーザー溶接 レーザー溶接は、レーザー光線を当てることにより発生する熱を利用して母材を溶かし、それを凝固させることにより接合する方法です。レーザー光を使用するため、通常の溶接と比較すると高速であり、歪のない溶接を行うことができます。熱の影響が少ないことから厚板から薄板まで精密な溶接が可能。半面、他の溶接方法以上に高度な技術・技能を必要とする加工方法です。 また、さまざま母材や局所的な加工にも対応できるため、精密さが必要とされる溶接に適しています。コンピューター制御やCADとの組み合わせも可能なことから、生産ラインへの組み込みやロボット化などに適しています。測量、通信、医療など幅広い分野で利用されている溶接方法です。 今回のまとめ 溶接は身の回りのさまざまな分野で重要な役割を果たしていますが、その分専門的な知識や熟練した技術・技能、経験が必要となってきます。溶接の技術・技能は奥が深く、一長一短に身に着くものではありません。試作品製作を行うためのスキルアップのために、繰り返し作業を行うとともに、基礎を学ぶという意味でボイラー溶接士などの資格取得を目指すことをおすすめします。 専門家の指導を仰ぎながら、溶接技術・技能について学び、試作品の品質を高めていくよう努力を続けましょう。