試作品製作で開発担当者が知っておくべき試作部品と量産部品の違い 2022/10/04 column 製品開発の最終目的は、言うまでもなく自分や周囲の人たちから寄せられたアイデアを活かした製品を世に送り出すことです。最近では、3Dプリンターなどの開発により、専門家でなくとも個人でものづくりを楽しむ環境が整ってきました。 今回は、開発担当者に向けてぜひ知っておいてほしい試作から量産までの大きな流れ、両者の違いや注意点についてご紹介します。 【目次】 1.試作品製作における試作部品と量産部品は製造加工法と設計・材料が違う 2.試作と量産の違いによる注意点 3.量産開始までの大まかな流れ 4.今回のまとめ 試作品製作における試作部品と量産部品は製造加工法と設計・材料が違う 試作品は機能・デザインの確認、性能評価や試験のための製品ですので、少量のみ生産します。一方、最終的な完成品は、時に数千ロット以上と大量生産する必要があります。 試作部品と量産部品の異なる点は次の通りです。 製造加工法 部品の量産段階には、樹脂成形品、プレス品などには金型が必要になりますが、コストの都合上、試作の段階で金型の利用は難しいことがあります。 そのため、試作部品では、簡易型の射出成形、切削加工、鋳造加工、3Dプリンターなどの加工法が選択されます。 設計 試作部品と量産部品では求められる仕様・性能が異なるため、設計も変わってきます。試作の場合、柔軟な対応ができますが、量産するためには試作設計での問題が改善されないと同一品質のものを大量に製造することが難しくなります。 材料 性能評価や試験用サンプルは量産品と同一の材料で試作するため、使用する材料によっては加工法が限定される可能性があります。 試作と量産の違いによる注意点 試作では理想的な製品ができたとしても、量産へ移行した際に思いどおりの製品ができなければ高い評価を得られません。注意点は次の通りです。 量産でも無理なく製造できるか 試作と量産では製造方法が異なります。例えば、3Dプリンターは大量生産には向いていませんので、量産するためには、設計段階で金型を意識した設計が必要となります。 コストを意識した製造となっているか コストを意識せずに作業を進めてしまうと、苦労を重ねて試作し、量産の段階まで来た際にコストが高すぎることに気付くことになります。量産への移行時点で、設計や仕様変更にならないようにコストの意識をもって設計することが大切です。 量産開始までの大まかな流れ 試作から量産までの大まかな流れは、次の通りです。 原理試作 機能や性能を限定しつつ実際に製品として製造してみる工程です。設計書、仕様書、図面、スケジュール表などに基づいて試作品を製造します。 機能試作 製品が仕様通りに動くかを検証する技術検証段階の試作となります。 設計検証試験 設計に問題点がないかを検証する段階です。量産を前提とした製品化を念頭に置き、材料や付随する部品なども量産品と同一のものを使用して試験します。 生産検証試験 製品が大量生産に耐えうる設計になっているかを検証する段階です。量産直前に最終確認のための試作品を製造し、試験をします。 今回のまとめ 試作から量産までにはさまざまな重要な工程があり、どれも慎重な対応が必要ですが、いずれも製品化を意識したコスト意識が最も重要です。 どんなに素晴らしい新しい発想があっても、それが製品化され世の中に出なければ意味がありません。基礎的な知識を十分身につけるとともに、自由な発想をいつまでも持ち続けるよう心がけ、世界の出来事に目を向ける姿勢を忘れないようにしましょう。